士業や経営者なら持っておきたい「見られている」という感覚

「頭の良さ」というのは、学歴や知識の有無や記憶力ではなく、窮地に追い詰められたときに出るアイデアだったり、人が思いつかないことを思いつく着想力だったりするのではないかという話を、以前どこかでしたことがありました。

頭がいい人というのは、「見られている」という感覚が強いと個人的には感じます。例えば、俳優やタレントなどの芸能人やアーティストで、売れている人はすごく頭がいいと感じますし、地頭がいいから売れるんだろうと思っています。

人から見られているという感覚

彼らが人より優れている点に「見られている」という感覚を持っていることが挙げられます。一挙手一投足全て見られているから、「自分がどういたいか」よりも「周りにどう見られているか」という感覚が非常に優れてくるんでしょう。

服装やライフスタイル、ブログやツイッターの発言などの全てが、基本的に「読まれる」ことを前提にした表現になっています。「こういう風にとられるだろう」「受け止められるだろう」と思われる前提で行動しているからか、どのシーンでどう行動をすればいいかという判断が鋭い。

一方で、経営者や起業家の場合は、「自分がどうしたいか」が先行してしまい、「見られている」という感覚が減ってきます。こうした人の典型的な例としては、仕事の失敗をブログやFacebookに書いてしまうことです。「それを見たクライアントが依頼したいだろうか」という視点が抜けてしまっている。

Facebookやブログに愚痴を書いている人もいますが、その発信が「見られている」という感覚が足りていないと、不要なことまで書きすぎてしまうので注意が必要です。

体調の悪さを発信する人もいますが、個人事業主で仕事が欲しいのなら、病弱であるというイメージは持たれないようにしたほうが得です。だからあえて書く必要はありません。そういったことをどう感じるかが、「見られている」という感覚の強さに表れます。

他の人と違うエリアで勝負する

見られているという感覚がわかると、その次に「ポジション」という考えがわかってきます。例えば、かわいい系のタレントで売れたいと思ったら、たくさんいる同系統のタレントとの差別化をどうすればいいかという発想が生まれます。いわゆる、「ポジショニング理論」という発想です。

ビジネスの場合はもう少しマーケットが広いので一概には言えませんが、「他の人と違うエリアで勝負する」ということを考えている人は、とても頭がいい人です。小室哲哉さんの「罪と音楽」という本がありますが、その本に「空席理論」という話がありました。

男性ソロシンガー、デュオ、バンドは数多くある。だが、男性三人組はいなかった。それで「ここには空席がある」と判断して、TM NETWORKとしてスタートをしたというのがその内容ですが、客観的に俯瞰できたからこそ取れた戦略です。

ビジネスでこの感覚がなければ、ライバルがいるところに突っ込んでいってしまいます。「いいサービスを思いついた!」といって、リサーチが甘いままその市場に突っ込んでしまう。そうではなく、最適なポジションを考えるという発想が必要です。

例えば、大手の税理士事務所と、高額報酬をとって手厚くサービスを提供している個人事務所があったとします。その中で自分が生き残るためにはどうすればいいか、という発想が空席理論の発想です。「見られている」感覚があることで、客観的に見るという視点が養われます。それによって差別化を模索したり、違うポジションを探すことができます。

「ダブルポジション」という考え方

お笑い芸人も多様化していますよね。一昔前は、お笑い芸人といえば基本的には喋る、ネタをするだけの人たちでした。ですが今では家電に詳しいということでテレビに出たり、掃除のプロや料理のプロとしてのスキルをアピールする人が出てきました。このように、ダブルポジションを取ろうとする流れが数年以上前から出てきています。

周りを見たら面白い人がたくさんいるけれど、そこで勝負しても勝てない。だから違うポジションを探そうと考えた。改めて周りを見てみると、「芸人」ということに加えて、家電や料理、掃除に詳しいというダブルポジションが見えてきた。その中で、ポジションを探しているように見えます。

自分が客観的に見えていないと、面白さだけで戦おうとしてしまいます。確かに、芸人なのだから面白さ以外のところで戦おうとするのは邪道だと考える人もいるでしょう。ただ、客観的に「戦略」としてみるならば、「ポジションを探す」というアプローチはとてもいいものだと思いますね。

ポジショニングで「戦わない」ことを可能にする

コンサルタントとしてやっていきたいなら、ポジショニングは大切です。これは「戦わない経営」のひとつです。例えば、コンサルタントで世界一になるというよりも、誰も開拓していないエリアで一番に旗を立てたいという発想はこれに近いものがあります。

その手段が客層特化なのか新しい手法なのかはわかりませんが、「空いているポジションを探す」という発想がなければ、ずっと競争を続けることになります。そのための第一歩として「見られている」感覚が重要になるんです。

自分が選択したいポジションがあって、そこにたどり着くためにはどう見られるように持っていけばいいのか。広い意味ではブランディングになりますが、そのあたりの感覚を身につけていくことが、士業や経営者としても重要なことだと思っています。