コンセプト経営との出会いに導いてくれたふたつの出来事

今回は、理念経営大学とアメリカでコンセプトという価値観に出会うまでのことをお話しします。

理念経営大学とは

理念経営大学は、2011年から2012年にかけて行いました。理念という言葉はだんだん浸透してきましたが、2011年位の頃は、理念があっても儲からなければ意味がない、綺麗事ばかりいっても稼げないと意味がない、というような価値観がありました。

ただ、そうはいっても稼げていればそれでいいのかというと、それも違うんじゃないかという空気も出始めていた、そんな頃です。そこで、「理念をしっかり経営に落としてちゃんと稼いでいる素晴らしい会社の経営者から話を聞こう」と、理念経営大学を企画しました。

理念経営大学では、色々な素晴らしい方をお呼びしました。ここで特に印象に残っているのが、これからお話しする3名の経営者の方々のお話です。
※役職は講師を務めていただいた当時のものです

岩田松雄さん(元スターバックスCEO)

まずは、元スターバックスCEOの岩田松雄さんです。

岩田さんは非常に著名な方で、端から見ていてもとても輝いている方です。岩田さんが講義の最中、「皆さん、世の中の会社って何のためにあると思いますか」と受講者の方に問いかけたことがありました。

何が会社の役割かというのは人によって様々で、雇用を生み出すとか、社長のためにあると考える人もいます。ですが岩田さんは、「全ての会社は世の中を良くするためだけにある」と断言した。「経営って、シンプルでいいんだな」と思った記憶があります。

重永忠さん(生活の木代表取締役)

次の方は、生活の木で代表取締役を務めている重永忠さんです。「生活の木」という会社を男性はあまり知らないかもしれませんが、女性は聞いたことがある方も多いと思います。アロマセラピーの精油やハーブを扱っている会社です。
重永さんがおっしゃっていたのは、「生活の木も最初から理念があったわけじゃない」ということ。経営を始めて20年くらい経ってから理念を作ったという話をされていました。なのに、何故ぶれずに生活の木をやってこられたのかというと、経営哲学の前に人生哲学があるからだと。

要するに、社長の生き方が決まってないのに会社の生き方が決まるわけがないということをおっしゃっていたんです。

重永さんの人生哲学は、「健康・自然体・楽しさ」。だからこそ「生活の木」は健康で自然でいるために精油やハーブを売る。それが変わらず根底にあるということを話されていました。「自分がどうしたいかが決まらないと、会社をどうしたいかは決まらない」ということが腑に落ちた一言でした。

山本敏行さん(Chatwork CEO)

最後が、ChatworkでCEOをされていた山本敏行さんです。理念経営大学で講師をしていただいた時というのは、山本さんがシリコンバレーに行き始めたくらいの頃です。

山本さんの講義の中で印象的だったのは、「背水の陣で臨まなければ成功しないだろう」とおっしゃっていたこと。

山本さんは、Chatwork以外にも事業をたくさんお持ちでした。なのに、Chatwork一本で勝負するために、利益が出ていた他の事業を無償譲渡したそうです。そして行ったこともないシリコンバレーで勝負するという。

普通にできることではありません。山本さんと自分はあまり歳も変わらなかったので、余計に凄さを感じました。他にも素晴らしい講師の方々をお招きしてお話を伺いましたが、このお三方の話がとても印象に残っています。

ちょうどその頃、アメリカに行く機会がありました。理念経営大学でこの方々の講義を聴いた後です。そして、アメリカでコンセプト経営に出会うことになります。

コンセプト経営との出会い

アメリカではいろいろな町を歩いて、色々なお店を見ましたが、店がとにかくすごく美しいと感じました。例えば「True Food Kitchen」というお店があります。「トゥルーフード」というのは、遺伝子組み換え原料を使っていない食べ物という意味です。True Food Kitchenはその名の通り、トゥルーフードだけを扱うお店です。

そこには色々なジャンルの食事がありました。サンドイッチもあればピザやタコスもある。普通に考えたら何屋なのわからないんですが、食事だけではなくお酒もソフトドリンクも、全てがトゥルーフードです。そして店員さんもほとんどメイクをしていないんですね。True Food Kitchenでは、自然であることが統一して表現されていました。

そういうお店を数多く見ていくうちに、どうしてこんなにきれいにまとまってるんだろうという疑問が湧いてきたんですが、その答えを教えてくれたのが、たまたまアメリカに持って行っていた「コンセプトの作り方」という本でした。これは、任天堂Wiiの企画開発者である玉樹真一郎さんが書いた本です。こうして私はコンセプトに出会いました。

コンセプトとは

コンセプトについてわかりやすい例があるのでお話しします。一緒にいたコンサルタントから聞いた話ですが、アメリカ人の感覚として、家を買ったら「ハウス」から「ホーム」に変える、家を建てたら自分らしい家にする、という感覚があるそうです。

例えばカントリー調にしようとか、モダンな感じにしようとか。そういう発想があると、例えばカーテンの色一つでも迷う必要がないんです。なぜなら、コンセプトが決まっているからです。

現地に、色違いの同じ商品を棚に並べた店がありました。例えば、商品は一つのタオルなのに何色も展開している。UNIQLOの雑貨版のようなお店です。

そういうお店で、多くの日本人はおそらく色を即決できません。赤がいいのか、青がいいのかといって迷う人が多いと思います。でも、大元のコンセプトが決まっていれば迷わないんです。

例えば浴室や洗面台が青なのであれば、海や魚をイメージするような色のタオルを置いた方が綺麗かな、という発想になる。水族館のようなイメージにしたいのなら、それに見合う色のものを買う。「迷う」ではなくて「選ぶ」ということ。それがコンセプトです。

次回はいよいよ、「コンセプト経営」についてのお話です。