成長の踊り場から、コンセプト経営へ

今回も、コンセプト経営についてのお話を進めていきます。

成長しているのになぜ経営が立ち止まるのか?そこには色々な理由があります。例えば販促やマーケティングがうまくいっていないとか、ビジネスモデルの欠陥、経営の戦略ミス。色々ありますが、中でも大きいのが人間の問題です。会社は機械でできているわけではないので、やはり人の在り方が出てきます。特に、小さい会社の売上は99%社長の意思一つで変わります。

日本にある企業のほとんどが中小企業ですが、一番怖いのが経営者のモチベーションの急落です。小成功で満足してしまうとか、事業拡大の動機がないとか。まれに動機がお金という人がいますが、そういう人はあまりモチベーションに左右されずに売上げが上がることを楽しめます。

ですが、動機が他にある人は、ある程度お金が手に入ったり不足なく生活ができるようになってしまったりしたら、多くの場合満足してしまい、そこで成長が止まります。

もうひとつが従業員のモチベーション低下です。仕事に意義が感じられないとか、成長を感じられない職場や人間関係がその要因となりますが、結局は、社長も社員もモチベーションが低いと当然会社もうまくいきません。逆に社長のモチベーションが低くても、社員のモチベーションが高ければそれに助けられるところがあります。

結局はツールやテクニックに大きな問題があるというよりも、社長や社員の意識の問題のほうが圧倒的に大きいものです。これを「成功の踊り場」と呼びました。

成長の踊り場にいる経営者は理念を作りたがる

成長の踊り場にいるときに経営者がどういう行動に出るかというと、多くはもう一度基本に立ち戻って理念や制度を作ろうという発想になります。私もそうですした。

そして、例えばスターバックスのミッションステートメントなんかを真似しようとしたりする。ああいうものを作りたくなるんですね。そして意気揚々と作って社員に見せるけど、社員はついて来れない。

理念や制度を作ること自体は否定しませんが、根本的に何かがちぐはぐになっています。実際に色々な会社の経営理念やビジョンを見ましたが、やはりどこか他人のものなんです。だから覚えられない。よく「社員が守るべき17のこと」なんかを作る方がいますが、できたら満足してしまう。そして使ったことがないというケースがほとんどです。でも、これでは全く意味がありません。

なぜかというと、自分の本心から出た言葉ではないからですね。いくら耳障りのよいことを言っても、社長の心の叫び以外は届かないんです。

もちろん、理念や制度を持っている会社にも良い会社がたくさんあります。ただ、そのやり方が自分に合っているか、自分が社員だったらどう感じるか、そこが大切です。覚えられない理念やクレドは存在しないのと一緒だと思って、それらを最もシンプルにしたものがコンセプトでした。

コンセプトのつくりかた

コンセプト経営の着想には、任天堂のwiiを作った玉樹真一郎さんの「コンセプトのつくりかた」という本が大きく影響しています。玉樹さんの本にも書いてありますが、コンセプトには願いが込められています。

コンセプトには「どうしたいのか」という願いがあるわけです。例えば、wiiはゲーム機で革命を起こしましたが、当時任天堂のミッションや事業目標には、「ゲーム人口の拡大」がありました。

昔、ゲームは一人でするものでした。そんなゲームを家族でできないかというのが元々任天堂の思いだった。このように、やりたいことに対して強い思いがあるということがすごく大事です。パワーコンテンツジャパン株式会社は、士業が弊社のコンテンツを通じて世の中に貢献できればいいなというところがコンセプトです。

それから、コンセプトを実現するには何かのアイテムが必要です。つまりどんな事業でそれを実現するのか。パワーコンテンツジャパン株式会社はコンテンツがそのアイテムで、任天堂の場合はwiiを使ってゲーム人口を増やすことでした。

そう考えると「私たちは地域社会に貢献します」というのは実はコンセプトではありません。ですが、例えば「私達は清掃業業を通じて地域社会に貢献します」となれば、これは願いとアイテムがあり、コンセプトだといえます。

コンセプトがある商品はたくさんありますが、企業全体で一貫したコンセプトがあるかというと、それを持つ企業もあればない企業もある。そこで、企業自体にコンセプトがあればいいのではと考えました。

第2回C3は「企業コンセプトと生きるコンセプト」

第1回C3を終え、私はコンセプト経営を広めるためにさらにイベントを重ねていくことに決めました。第2回C3は「企業コンセプトと生きるコンセプト」をテーマに、個人の方と企業をそれぞれお呼びして開催しました。

このとき、企業の方は、ずっと目をつけていた株式会社タニタさんに来ていただきました。当時のタニタは、「はかるを通じて世の中の健康への貢献をします」と明言していました。タニタはヘルスメーターのイメージが強くて、中には電子機器メーカーと思っている方もいるかもしれませんが、そうではありません。

タニタはカロリー計算がされた食材食品の開発も行っていますし、食堂やレシピ本、ダイエットをテーマにした映画を作ったりもしています。実はこれらは全部「はかる」ということを通じています。だから、もしも今後ヘルスメーターを扱わなくなったとしても、何かで「はかる」商品やサービスが出てくるはずです。

生き方のコンセプトについては、元女流棋士会会長の矢内理絵子さんをお呼びしました。「将棋を通じて世の中に貢献する」というのが矢内さんのコンセプトです。実際にお話したときも、将棋が普及することならば協力してほしいし、やれることがあればやりたいとおっしゃっていました。

企業のコンセプトがあれば、「うちの会社はこれをやるべきだ」とわかるので、さまざまなことがすっきりします。ただ、コンセプト経営の完成度としては、これだけではまだ半分でした。それを気づかせてくれたのが第3回C3「ソニーコンセプト」です。このお話はまた次回に続きます。