2023年10月13日【「潰れる会社にはビリヤード台がある」は本当か…行政書士が「あるとヤバい」「ないとヤバい」と説く会社の備品】横須賀輝尚の記事がPRESIDENT Onlineに掲載されました。

潰れる会社のオフィスや社長室には共通点がある。特定行政書士の横須賀輝尚さんは「かつては『ビリヤード台があると潰れる』とよく言われたが、断言はできない。オフィスデザインに社長の嗜好が反映されること自体は問題ないが、それが見栄から来ている場合は要注意だ」という――。

※本稿は、横須賀輝尚『プロが教える 潰れる会社のシグナル』(さくら舎)の一部を再編集したものです。

職場でビリヤードをしている同僚
写真=iStock.com/aywan88
※写真はイメージです

「会社にサーフボードを置いている会社」は危ないのか

潰れそうな会社のシグナル、「組織編」です。

社長の変化やお金の変化は比較的見えやすいですが、組織の崩壊っていうのはちょっと見えにくい。そんな中でもできるだけ察知しやすいシグナルをまとめました。

もちろん、これがすべてではありませんが、もしかしたらもう身近にそういう兆しが見えているかもしれません。そういうわけで、潰れそうな会社のシグナル、「組織編」です。

まずは軽めの話。

「会社にビリヤードがあると潰れる」みたいな話が都市伝説のようにあります。「社員同士が仲良く、仕事だけじゃなくて楽しめる職場」で、かつ「成功している会社」の象徴かのようにいわれるのがビリヤード。

なぜ、卓球でもなくゲームセンターの筐体でもなく、ビリヤードなのかはわかりませんが、ともかくかつてはよくいわれました。「新築の本社」や「豪華絢爛な受付と美人受付嬢」なども、この手の話題ですね。

これは、「会社のお金を無駄に使っている」とか、「会社は遊ぶところではない」みたいなところから来ていると思うのですが、案外こういう社長の趣味がオフィスに反映されている会社ってあるものです。

そして、それが潰れる会社のシグナルかといえば、まあまったく断言できません。

例えば、社長のサーフィン好きが高じすぎて会社にサーフボードを置いている会社もあれば、同じく趣味の楽器だらけの会社もあるわけで。それイコール危ない会社とは言い切れません。世界的に有名な企業のパタゴニアとかにもサーフボード置き場がありますしね。

その備品やデザインは「なんのためにあるのか」

結果として民事再生の憂き目となってしまいましたが、こうした福利厚生で有名だった企業にワイキューブという会社があります。

創業者の安田佳生氏自身が『私、社長ではなくなりました。』(プレジデント社)で書いているように、ワイキューブは社員のモチベーション向上のため、社内にカフェやワインセラーをつくっていました。

そうした費用が会社経営を圧迫したのではないかという声もあったようですが、こうしたオフィスのおかげでメディア露出は増え、結果として投資額以上に会社のPR効果があったと記しています。

要は、なんのためにそれがあるのか、というのが本質です。度を越えないというのが大前提ですが、例えばオフィスデザインに社長の嗜好しこうが反映されるのは別に問題ないでしょう。

ただ、ひとつ気を付けたいのが、新築の本社や過剰なオフィスデザインが「社長の見栄」からきているかどうか。見栄からきていたら、度を越えていきますので注意が必要です。

理念がない会社は危ない

私は個人的に、会社の理念は極めて重要なものだと考えています。もちろん、理念があれば会社が儲かるわけではないですし、理念がなかったから潰れるというわけでもありません。

それでもなお、「理念のある会社は潰れにくく、理念のない会社は危うい」と考えています。逆の例から考えてみることにしましょう。

例えば、儲かっている会社がある。なぜ、その商品を扱っているかを聞くと「儲かるから」と社長は言う。社員の給与水準も高い。

こういう会社に勤めたい社員は、お金が目的。もちろん、それ自身は悪いとは思いません。お金、大事ですから。

でも、その会社の業績が低迷し、給与水準が下がることになったらどうでしょう。あるいは、その会社を遥かに超える好条件の会社が別にあったらどうでしょう。おそらく、給与が目的なら、条件の良い会社に乗り換えるはずです。それも、いとも簡単に。

なぜ、簡単に転職できてしまうのか。それは、その会社で働く理由が金銭面の条件でしかないからです。

この仕事を通じて、なにを実現するのか。どんな社会貢献をするのか。社長も、儲かるだけではモチベは続きません。だって儲かれば儲かるほど税金は高くなりますからね。

額面1億円の役員報酬を設定したとき、その約半分は税金です。お金だけでやる気出ます? なかなかそうもいかないんです。

様々な意見や見方がありますが、理念のひとつの効用は「その会社で働く理由ができる」というもの。案外、こういうのって大事なんです。まあ、抽象的な話なのでこのくらいで。

理念があるかが一発でわかる社長への質問

2つだけ補足。

なぜ、「理念のある会社は潰れにくく」と言って「潰れない」と断言しないのかというと、理念があってもかたちだけのことがあるから。使命のような本物の理念を持っている社長って、なかなか会社を潰さないですよ。

もうひとつ。

社長に聞いてみてください。「なんのためにこの会社をやっているんですか?」って。

これに歯切れよく回答できれば少し安心。なかったり、「単に儲かるから」だけだとちょっと危ういな……と私は考えちゃいます。

お金が基準なら、いざというときはあっさり社員を切っちゃうかもしれませんしね。

外部講演にばかり出かけている社長はヤバい

社長が講演業を始めると、それはひとつの危険なシグナルとお伝えしましたが、組織にも影響が出ます。

本業でない講演業をしているわけですから、社長不在の時間が増えます。意思決定までにかかる時間も増えていきます。そして、現場を離れてしまうので、業種業界的な勘も鈍ります。

講演業でチヤホヤされている社長は、調子に乗りがちです。

会議場で聴衆の前で演説をするビジネスマン

写真=iStock.com/baona
※写真はイメージです

褒められているもんだから、自己承認欲求も増長しています。

「いやぁ講演は疲れるなぁ」「また講演で呼ばれちゃったよ」

社長は仕事しているつもりなのでしょうけど、社員は当然白け顔。

だって、社長の講演業なんて半分旅行でサボっているみたいなもんですから。お土産ごときでは社員はごまかされません。信頼は徐々に失墜していきます。

もっとも、講演業そのものを否定するわけではありません。経営者としてのブランド価値も高まりますし、PRにもなります。要は、社員にきちんと説明責任を果たさず、旅行のように見えてしまうと、危険ということです。

会議に「不要な参加者」が集まっていないか

会議はもともと必要なものです。

企画会議、営業会議、戦略会議……いまはオンラインツールも充実していますので、必ずしも一堂に会する必要があるわけではありませんが、この会議に「オブザーバー」や「顧問」とか「相談役」とか参加者が増えてくるとちょっと心配です。

なぜなら、会議で様々な意思決定がされることは重要ですが、それに必要のない社員が参加しているということは、その社員は利益に直結するような仕事をしていないことになるから。会議ばかり、会議だらけの会社は営業ができてないという見方もできます。

はたまた、すでに経営から降りた前会長が会社に来たから会議に参加してもらって、ありがたい助言をいただく。前会長が参加するからには、会社の主要人物は集めなきゃならない。さらに前会長が来たからには、会議のあと一席設けないと……というのも、本末転倒。

要は、なんのための会議なのか。会議のための会議になっていないか。軽目のシグナルですけど、そりゃ会議ばっかりやっていたら、何も進まないですよねってことです。

SNS一つで会社が倒産してしまう時代

これも全部が全部統制できるかといえば難しいのですが、社員のSNSに関して無頓着、無関心なのはちょっと怖いかなと考えます。

いまや一夜にして炎上し、倒産にまで陥ってしまう時代です。以前に話題となった「バイトテロ」など、社員のSNS運用によって会社経営に回復不可能なダメージを負ってしまう可能性があるわけで、少なくとも秘密保持契約や仕事中のスマホ利用などには一定の制限をかけておくべきです。

最近では、SNSで自ら情報発信する社長も少なくありません。

見栄や承認欲求からくる投稿などは、経営者のSNS投稿の特徴ですが、社長にせよ社員にせよ、多くの場合「見られている感覚」が欠如していることが炎上や低評価の要因です。

仮にフォロワー数が多くなかったとしても、そこはオープンなインターネットの場。

FacebookのようなクローズドなSNSでも、いまはスクショを撮られてTwitterで拡散なんていうのも当たり前で、中にはLINEのやりとりやSNSのDMのやりとりまで公開されてしまう時代。

そういう意味では、小さなことにもスキのない会社が潰れにくく、情報発信に楽観的な会社は危険ということになるでしょう。

「社長の名前 評判」で検索してみると…

このトピックはどこに入れようか悩んだのですが、社員からも見えるということで本章で。わかりやすい指標とも言えますが、上場企業なら株価の低迷は普通に倒産に繋がる可能性があります。

特に、株価と給与の関係は注意が必要。例えば、株価が低迷していても、順調にベースアップで給料が上がるのであれば、株価低迷は一時的なもの。

これに対して、株価の低迷と相まって、賞与がカットされるなど、下方に連動する場合には危険なシグナルといえます。

様々なカスタマーレビューもひとつの指標です。

最近は本当にレビューで購入や来店を決める顧客は多く、「実際に買ってもらえれば、良さがわかる」「うちの味は、レビューできるような浅い味じゃない。食べればわかる」と豪語していても、潜在顧客がレビューで決めるわけですから、放置することはできません。

横須賀輝尚『プロが教える 潰れる会社のシグナル』(さくら舎)

横須賀輝尚『プロが教える 潰れる会社のシグナル』(さくら舎)

ですから、低評価レビューの増加は怖いシグナルです。まあ、中には「この治療院の先生の怪我の処置は良かったのですが、態度が冷たくて最低でした。星☆★★★★」みたいなレビューもあるので、難しいといえば難しいのですが……。

それから、社長個人のネット上の評判にも注意。どこで炎上するかわからない時代です。

検索エンジンで社長の名前を入れると、検索サジェストに「評判」とか「評価」とか出るのは評判を調べられている証拠。ひどいのになると検索サジェストに「詐欺」とか出てきますので、このあたりもチェックしてみましょう。

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