栗城史多さんの死去に思うこと

登山家・栗城史多さん死去 8度目のエベレスト挑戦中

別に彼との知り合いでもありませんし、私は登山家でもありません。単に命が大事です。人生は有限です。そんなことで片付けられる話題ではないと思っていて、こうして取り上げています。

登山といえば、「孤高の人」を読んだことがあるくらいですが、登山関係者界隈では、栗城史多さんという方は、ちょっとした有名人でした。ネットで少し検索してもらえればわかるんですが、登山関係者からはあまり評判良くなかったんです、彼。

詳しいことは、ネットで検索してまとめでも見てもらえればと思うのですが、ざっくり言うと、虚偽・誇張が多く、それでいて七大陸最高峰の無酸素単独登頂を宣言し、ことごとく失敗している。

一方で、講演家としての活動は立派と揶揄され、クラウドファンディングでの資金調達には才能がある、なんて言われてしまう始末で、中には彼を登山家ではなく「下山家」とまで呼ぶ人もいたんだとか。ある人は、「真剣に登る気がない。いつか死ぬかもしれない。」という趣旨のことまで発言しており、現実のことになってしまった今、その警鐘は届かなかったのだろうか…と言われる。

彼が亡くなったことに関しては大変残念なことであり、心からご冥福をお祈りします。

ある部分では、とても批判が強かった。金儲けのため、ビジネスのための登山とも嘲笑された。これは個人的な考えですが、そういう目論見はあったと思う。登山はスポンサーがいないとある意味では成り立たない。

そういう意味では、資金集めは得意に越したことはないし、むしろ必要なもの。だから、本人は批判されていることをわかってやっていたのではないかと思う。それでも、本気で世界最高峰の無酸素単独登頂をやりたかった。特にネット中継とか、新しいことに取り組みたかったのではないかと思うんです。

まあ、門外漢の私が語るのもどうかとは思うのですが、処女登攀、つまり最初に登った人しか登山では覚えられない。前人未到の山というのは、いまではもうかなり少ない。となれば、新しいことをやるしかない。

あくまで彼のことはネットの情報からしか知らないわけなのですが、大学時代に出会った山岳という武器で、何かしたかった。何者かになりたかった。そういう人だったのではないかと思います。
一方で、上記のとおり批判も多かったわけです。ただ、なんと言われようとも彼はやりたかったのだと思います。

「いつも失敗している」と言われたって、標高5,000メートル以上の登頂にも成功しているし、失敗したと言われるチョモランマ(8,848m)、アンナプルナ(8,091m)、シシャパンマ(8,013m)も、8,000m級までは登攀しています(あくまで公開データから)。

8,000m以上というのは、デスゾーンと呼ばれ、人が生きていけないと言われる領域です7,000m級だって、とんでもなく低酸素なわけで、失敗=ダメだったとは、一概に言い切れないのではないかと思うわけです。

彼に対して、私は中立的です。支持も批判もしないつもりですが、やっぱり思うわけです。あと10年、20年登山を続けたらどうなっていたか、と。もしかしたら、すべての批判を覆すような偉業を達成できたかもしれない。

彼はある部分では本気だったんだと思います。何を言われても。そうじゃなきゃ、あんなリスクの高いことはしない。金儲けのために指9本失うなんてバカな真似はしない。まあ、これらに関しても様々な批判がありますが、ひとついえることは、彼は自分が公言した目標に対して、自分の命を差し出してチャレンジした。それだけは言えると思います。

これも個人的な推測ですが、今回の登山も命の危険を感じたら、あるいは登頂がもう無理と判断すれば、真っ先に下山するつもりだったのではないかと思います。

何かやりたかった。何者かになりたかった。自分なりには全力だった。でも、それは過程であって、世の中には伝わらなかった。そう考えていくと、やはり残念です。

私も世間的にはどちらかというと夢想家で、やりたいことがあれば、批判されつつもやり遂げますが、苦しいのはその「プロセス」です。途中だと誤解も多い。でも、その途中が一番くじけやすい。奇跡のリンゴの木村さんのように。

だから、ひとつ言えるのは彼のことを笑える人は少ないということ。もちろん、人の死を笑うということは現実的にはありえませんが、ネット上ではそういう態度やコメント、つぶやきをする人も多数出るでしょう。でも、彼より一所懸命生きているかといえば、そうではない。絶対にない。

もう一度考えるべきです。自分が批判されたとしても、成し遂げたいことは何か?

この「成し遂げたいことは何か?」という質問は2007年から2010年くらいのセミナーで、よく最後の一幕としてお伝えしていたものですが、何年経っても劣化しない質問じゃないかと思ってます。

(メルマガより転載)

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